Pumaのスロット枯渇とは?CPU 21%で502が6万件出た理由
タスク × workers × threads = 同時20。ELB 5xxとTarget 5xxを分ければ原因が見え、応答時間でスケールすれば捕まる
CPUもメモリも余っているのに、Railsアプリが502・504を吐き続けるときにどこを見ればいいかをまとめた。読み終わると、自分のアプリがいま同時に何リクエストさばけるかを計算でき、オートスケールの条件が実際に枯れる資源とかみ合っているかを確かめられる。
結論から。ボトルネックはPumaのスレッドスロットだった。スロットはCPUでもメモリでもないので、どのダッシュボードにも出てこなかった。
計器は平気な顔をしていた
メールを一斉送信した直後だった。ALB(AWSのロードバランサー)が50分間で502/504を62,684件返した。なのにグラフを開いても、枯れているものがない。
CPU 平常 1.6% → ピーク 21.3% (2 vCPU)
メモリ 66.5% → 36.7%
DB接続 10.7 → 13.7 (pool 25)
RDS CPU 4.3% → 9.7%
応答時間 0.009s → 2.7s
メモリはむしろ下がった。オートスケールは一度も動かなかった。最初はDBを疑ったが、RDSは10%も使っていなかった。
5xxを二つに分けたら見えた
ALBの5xx指標は二つある。アプリが返したもの(HTTPCode_Target_5XX_Count)と、ALBが自分で作ったもの(HTTPCode_ELB_5XX_Count)だ。
Target 5XX 0
ELB 5XX 62,684
TargetConnectionErrorCount 19,292
アプリはエラーを一つも出していない。リクエストがアプリまで届いていなかったのだ。TargetConnectionErrorCount は、ALBがバックエンドと接続すら張れなかった回数。ここまで見ると「アプリが忙しくて扉を開けられなかった」に絞られる。
同時20で毎秒296をさばいていた
Railsアプリが一度にさばけるリクエスト数は、掛け算一つで決まる。
ECSタスク数 × Puma workers × threads
その案件の puma.rb は WEB_CONCURRENCY・RAILS_MAX_THREADS で変えられるようになっていたが、ECSのタスク定義にはどちらもなかった。デフォルトの2と5がそのまま入っていた。
2 tasks × 2 workers × 5 threads = 20
ピークは毎秒296リクエスト。必要な同時実行数はLittle's Law(同時に処理中のリクエスト数 = 毎秒リクエスト数 × 平均応答時間)ですぐ出る。296 × 2.5秒 ≈ 740。席20個に740人が並んでいたわけだ。
遅いだけで終わらなかった理由 — ヘルスチェック
スロットが全部埋まると、新しいリクエストは待ち行列で待つ。ここまではただ遅いだけだ。
問題は、ALBのヘルスチェックも同じPumaのスロットを使うことだ。ヘルスチェックが列の後ろでタイムアウトすると、ALBはそのタスクが死んだと判断してトラフィックを切る。healthy host数(平均)が1.0から0.1まで落ちた。送り先がなくなったALBは自分で5xxを返す。過負荷が障害に変わるのはここだ。
オートスケールが捕まえられない構造
スケール条件はCPU 80%・メモリ80%・Sidekiqキュー300だった。死んだ原因のスレッドスロットは条件にない。ポリシーは三つも付いていて、配線も正しかった。監視している資源と枯れた資源が違っただけだ。「設定してある」と「動く」は別の話だった。
CPUが21%で止まったのにも理由がある。Rubyはプロセスごとに GVL(一度に一つのスレッドしかRubyコードを動かせないロック)が一つ。スレッドはI/Oを待つ間だけ順番を譲る。メール送信・外部API・遅いクエリのように待ちが多いと、スロットは満席なのにCPUは遊ぶ。「スロット満席 + CPU 21%」はI/O待ち型の負荷でよく見る形だ。
だからスケールの基準は TargetResponseTime が合う。待ち行列で待った時間が、ALBの測る応答時間に含まれるからだ。RequestCountPerTarget は代わりにならない。平常時は10分で70リクエスト(応答0.009秒)、障害時は10分で177,514リクエスト(応答2.5秒)だった。同じリクエスト数でも、処理時間しだいで必要なスロット数は数百倍変わる。
スロットを増やそうとして踏みかけたもの — RAILS_MAX_THREADSを読むのはPumaだけじゃない
「じゃあ RAILS_MAX_THREADS=8 を入れればいい」が最初の考えだった。入れる前にこの変数を読んでいる場所を探したら、Pumaだけではなかった。Railsが生成する database.yml も、コネクションプールの大きさを同じ変数で決めている。このブログが動いているリポジトリもそうだ。
# config/database.yml
pool: <%= ENV.fetch("RAILS_MAX_THREADS", 5) %>
その案件はPumaとSidekiqをsupervisordで一つのコンテナに載せていた。ECSの環境変数はコンテナ単位なので、Sidekiqのプロセスにも同じ値が渡る。
Puma threads 5 → 8 意図したもの
DB pool 25 → 8 意図しなかったもの
Sidekiq concurrency 10 → 10 sidekiq.yml に固定されていて変わらない
→ Sidekiqのスレッド10本が接続8本を奪い合う → ConnectionTimeoutError
Pumaだけ見れば pool ≥ threads で安全に見える。同じコンテナの別プロセスまで見て初めて気づく。そこでpoolを DB_POOL_SIZE のような専用の変数に切り出した。一つの変数が二役を兼ねている構造が原因なので、値をいじるだけではまた起きる。
デプロイ順も引っかかる。terraform apply はタスク定義の環境変数をすぐ変えるが、database.yml はイメージの中にある。pool分離のコードが出る前にapplyすると、その瞬間にpoolが8になる。インフラとコードは別の道を別の速さで本番に届く。対になる変更は、順番をPRに書いておく。
自分のアプリでまず見るところ
本番の環境変数に WEB_CONCURRENCY・RAILS_MAX_THREADS が本当に入っているかから見る。デフォルトのまま動いているなら、スロット数は思っているより少ない。Puma.stats(または pumactl stats)を見ると、働いているスレッド数 busy_threads と待ち行列の長さ backlog が出る。平常時はどちらもほぼ0で、余裕たっぷりに見える。負荷が来たときにどれが先に枯れるかは、前もって計算しておかないとわからない。
診断の順番と workers・threads の比較は下の詳細にある。「資源は余っているのに5xx」のような障害を抱えている、あるいはRailsをECSに載せる構成を一緒に見てほしいなら、negabaro に気軽に聞いてほしい。
「資源は余っているのに5xx」の診断順
- ELB 5xxとTarget 5xxを分けたか。 Targetが0ならアプリは無罪。リクエストが届いていない
- TargetConnectionErrorCountが上がったか。 上がっていればバックエンドが接続を受けられない状態
- healthy host数が落ちたか。 落ちていればヘルスチェックがアプリのスロットを共有していないか見る
- 同時スロットを計算したか。 タスク × workers × threads。デフォルトのまま動いていないか
- 必要な同時実行数を見積もったか。 毎秒リクエスト数 × 平均応答時間
- オートスケールの条件が実際のボトルネックとかみ合っているか。 CPU・メモリ基準でスレッドが枯れたら永遠に発火しない
- 同じコンテナで別のプロセスが動いていないか。 環境変数はコンテナ単位。Pumaだけ見ると見落とす
workersとthreadsは性格が違う
| workers (WEB_CONCURRENCY) | threads (RAILS_MAX_THREADS) | |
|---|---|---|
| 正体 | forkした別プロセス | プロセス内のスレッド |
| 平常時のメモリ | worker数ぶんかかる | ほぼかからない |
| CPU並列 | できる(GVLがプロセスごと) | できない(プロセスにGVLが1つ) |
| 効くとき | CPUバウンドでもI/Oバウンドでも | I/Oを待っているときだけ |
| 天井 | メモリ | GVL・DB pool |
メール・外部APIのように待ちが多いならthreadsを、計算が多いならworkersを先に見る。どちらにしてもDB poolが付いてこないといけない。
スロットを増やすとCPUスケールが効き始める
この事例では、タスクあたり10スロットが満席のときCPUが21.3%だった。1スロットあたり約2.1%。逆算するとこうなる。
20 スロット/タスク → 満席でCPU 約42%
32 スロット/タスク → 満席でCPU 約67%
38 スロット/タスク → 満席でCPU 約80% ← スケール条件に届く
スロットを多めに置くと、見えなかった枯渇がCPUとして見えるようになる。ただしこれは回り道で、応答時間の基準を足すほうが確実だ。
キーポイント
ELB 5XXとTarget 5XXを分けて見る。Targetが0ならリクエストはアプリに届いていない
同時スロット = タスク数 × WEB_CONCURRENCY × RAILS_MAX_THREADS を実際の環境変数で計算する
必要な同時実行数 = 毎秒リクエスト数 × 平均応答時間(Little's Law)と比べる
オートスケールにTargetResponseTime基準を足す。CPUだけではI/O待ち型の枯渇を捕まえられない
RAILS_MAX_THREADSを上げる前にDB poolを専用変数に切り出し、コードのデプロイ → terraform applyの順で出す